むち打ち

交通事故外傷に多い「むち打ち」は、4つの型に分類されます。
それぞれの型について説明します。

① 頸椎捻挫型

X線所見上、頚椎に骨折・脱臼・亜脱臼を呈するような明らかな頚椎の異常可動性がない事を前提とします。
首を固定する筋肉(胸鎖乳突筋・前斜角筋・僧帽筋・菱形筋・大胸筋など)と靭帯(椎間関節)の損傷により生じます。次のような症状が起きます。

首を曲げたり回す時に痛みを感じたり、首を動かさなくても痛みがあり、寝違いの症状に似ている。また、首~肩に緊張感を感じている場合もあります。車の運転など集中して目や腕を使い出すと首や肩が痛み出す人もいます。

医師の診断では、神経症状(知覚や筋力の低下など)はないものの、手足のしびれ・だるさ等の自覚症状を訴えます。接骨院(柔道整復師)での施術適応です。

② 頸部交感神経症候群

フランスの神経医バレリュー(Barré-Liéou)が、後頚部交感神経系の興奮により、以下の症状が出たものをバレリュー(Barré-Liéou)症候群とて報告しています。
後頭部・項部痛、めまい、耳鳴、眼精疲労、全身倦怠、動悸などの症状が出たり出なかったりすることがあり他覚所見に乏しい。

内耳の症として、めまいや耳鳴り、眼の症状として目の疲れ、かすみ、視力低下、心臓の症状として動悸や心臓の痛み、喉の症状としてかすれ声を生じる。

首の神経が直接的にダメージを受けていなければ、接骨院(柔道整復師)の施術適応です。

③ 神経根型

脊髄の運動神経と知覚神経が集まっているところを「神経根」と呼びます。
脊髄の損傷された神経根により、運動麻痺や感覚障害の分布が異なります。

この神経根の周りに腫れが起こり、引抜きのような損傷が起こると、それぞれの神経が支配している部位に放散痛、しびれ感、筋力低下、 筋萎縮、運動及び知覚障害など症状があらわれます。また、頸椎の過伸展・側屈回旋により症状は増悪します。
整形外科テストとしてスパーリングテスト、ジャクソンテストがあります。いずれも、椎間孔が狭くなるように神経根の圧迫を増強する方法です。

首の神経が直接的にダメージを受けていなければ、接骨院(柔道整復師)の施術適応です。

④ 脊髄型

頸椎の支持組織である筋肉,靱帯が衝撃の外力に耐えきれず,完全に断裂をしてしまうと,頸椎は正常な骨の位置関係が保てなくなります。

骨折あるいは脱臼により、脊柱管は骨がずれて,脊髄が狭窄を起こし損傷する事で、 上肢(手・腕・肩)だけでなく、下肢(腰,足)にも明らかな神経症状が存在するようになります。(感覚神経の損傷)。又、膀胱・直腸障害を生じるようにもなります(過活動性膀胱と低活動性膀胱)。症状は下肢よりも上肢に著明で、死の転帰をとることもあります。

接骨院(柔道整復師)の施術適応外です。