腰部に多い疾患について、その概要をまとめて紹介します。
腰椎ヘルニア
ヘルニアは頸部や胸部に比べて腰部の頻度が高い疾患です。特に第4,5腰椎間、次いで腰(第5腰椎と仙骨の間)、仙骨間に多い疾患です。
20代~40代男性に好発します。前傾位で腰を捻る動作で起こる場合があります。
腰椎では脊髄がL1/2高位で終わり、それ以下は馬尾神経になっているため、脊髄症状は現れず、神経根症状が現れます。
椎体と椎体の間にある椎間板というクッションのようなものの中身の髄核と呼ばれるものが線維輪を圧迫したり、線維輪から飛び出してくる疾患です。その時の神経根の当たり方や当たる位置により症状が現れます。
症状
- 腰痛、疼痛性側弯を伴う腰椎運動制限
- 坐骨神経痛
- 下肢運動、知覚麻痺(障害される神経により場所が変わる)
- 膀胱、直腸障害
- 筋力低下
- 膝蓋腱、アキレス腱反射の低下
腰部脊柱管狭窄症
腰椎部脊柱管の横断面積がせまくなり馬尾神経の障害をきたす疾患の総称です。
横断面脊柱管形態は楕円、三角形、三つ葉型に分けられ、下部の腰椎にいくにつれ三角型、三つ葉型が多くなり、狭窄をおこしやすくなります。
狭窄の原因として変形性脊椎症、椎間板ヘルニア、横色靭帯肥厚、すべり症、手術後の瘢痕などが挙げられます。
年齢は50代~80代に好発し男性比が高くなっています。
症状
- 腰痛、馬尾神経障害に基づく下肢神経症状が現れる
- 間欠性破行が特有の症状であり、歩行によりしびれ、下肢に痛みが出現する
この症状は少し休んで、前かがみになることで消える - 下肢冷感
- 膀胱、直腸の障害
腰椎分離症・すべり症
スポーツを活発に行っている10歳代前半に起こりやすいといわれています。
腰椎には椎体と椎弓という部分があります。
後側の椎弓部分への繰り返されるストレス(頻回なジャンプや背中を反らす動作)により椎弓が疲労骨折(骨のひび)を起こしている状態を腰椎分離症といいます。
第5腰椎に好発します。
腰椎分離症を放置すると腰椎分離すべり症に進行することがあります。
腰椎分離すべり症は、分離した腰椎の1つ上の腰椎が前方に滑っている状態で腰椎の前弯が増強します。
症状
腰を反らした時に痛みがでたり、前かがみになった時に腰の不安定感を感じることがあります。
ひどい場合は、お尻や太ももの裏側に痛みが出ることもあります。
変形性脊椎症
椎間板の変性が長くなることにより、椎間腔が狭小化します。それと、異常可動性により、椎間関節に骨棘、骨硬化、関節軟骨の減少などがおこります。
症状
- 腰痛
- 下肢運動、知覚障害
- 坐骨神経痛
脊椎圧迫骨折
背骨(椎体)が押しつぶされるように変形してしまう骨折を脊椎圧迫骨折といいます。
第12胸椎や第1腰椎に起こりやすいです。
尻もち転倒などにより起こりますが骨粗鬆症の人はくしゃみや重いものを持ち上げる・体を捻るような日常生活のちょっとした動作で起こることもあります。
症状
- 寝返りや起き上がるなど体を動かした時に痛みが強く、安静にしていると痛みが少ないことが特徴です。
- 骨粗鬆症の方が圧迫骨折すると背中が丸くなる(円背)になることが多く、ほかの椎体にかかるストレスが大きくなり円背が徐々に進行することがあります。
予防方法
- 転倒しないように注意する
- カルシウム・ビタミンⅮ・ビタミンKを十分に摂取する
- 運動や日光浴をする